歯の神経の形態はとても複雑です。
根管治療という神経の治療を行う際は、その形態を把握することが重要です。
歯の神経管が癒合して、アルファベットの「C」の形になっている根管のことを「樋状根」と言います。
発生するのは下顎第二大臼歯(前から7番目の奥歯)がほとんどで、通常の根管治療とは形態が異なるため、治療が難しい根管です。
症例は以前に他院で根管治療を行なった歯ですが、内部に感染が起こり根の先に病巣を作ったものです。
歯の後ろに赤くプチッと膨らんだ部分がありますが、これはサイナストラクトという根の先の膿の出口です。
レントゲンでは根管治療の際の充填物(中に詰めるもの)が不十分であることと、クラウン(被せもの)の不適合が確認できます。
根尖病巣が歯周ポケットと繋がっており、治療が難しい状態です。
通常の器具のみでは樋状根を清掃することは難しいので、超音波を用いた器具、薬品による化学的な洗浄にて根管内の清掃を行い、CWCT法という根管充填法にて根管内を緊密に充填していきました。
治療前後のレントゲン写真の比較です。
治療直後は根の周りに黒い影がありますが、2年後の写真では影は消え、骨ができたことがわかります。
根管治療において、CT、歯科用マイクロスコープ等を用いることは根管治療の成功率を上げることに役立ちます。
今回の症例は病巣が改善し、歯の保存が可能でした。
実際にはこのような症例全てで根管治療が成功する訳ではなく、最終的に抜歯となるケースもあります。
そのようなリスクも含め、治療前にきちんと説明をすることを心がけています。
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