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むし歯を削る前と詰めた後、情報提供を受けてますか?




 みなさんは自分の口の中にむし歯があると言われたらどう思いますか。そして、歯医者に何を望むでしょうか。多くの人はむし歯があることを心配し、歯医者に処置をすることを望むと思います。そしてそれは、むし歯を取り除いて詰め物をする、もしくは被せるような治療を想像されていることでしょう。しかしそれは、果たして本当に適切な処置なのでしょうか。


 むし歯というのは、むし歯を作る細菌が食べものから酸を作り出し、それによって歯が溶ける現象です。一般的なイメージの大きな穴が開いたようなむし歯というのは、かなりむし歯が進行した状態のものです。しかし実際にはその状態になるまでに、歯の表面から長い時間をかけて進行します。初期の状態で発見することができれば、むし歯になりにくい口の中の環境を作ることで進行が止まることもありますし、場合によっては元の状態に近いところまで回復することもあります。



 残念ながら全てのむし歯が口の中の環境を整えるだけで問題解決する訳ではないので、必要なものについてはむし歯を削って取り除き、詰める、被せる、といった処置を行います。歯は一度削れば二度と元に戻らない組織なので、削るのか、削らないのか、削るとすればどこまで削るのか、といった判断は慎重に行うことが大切です。


 さて、みなさんは今まで何本のむし歯治療を受けてきたでしょうか。それらはいつ治療をしたものでしょうか。処置の前はどんな状態で、どういった理由でその材料を選択されたのでしょうか。これに答えられる患者さんはほとんどいません。多くの人は、自分の歯でありながら、その健康状態についてほとんど知識がないのです。


 例えば自分が癌になったとして、それがどこの癌かも知らないし、化学療法や放射線療法、切除療法の何をしたのかも分からない、いつ治療したかも覚えていない、という人はいないと思います。なぜでしょうか。これは医療者側が検査を行い、検査結果を伝え、治療方針について相談し、治療の日程や方法について文書提供し、治療後も適切なモニタリングを行って経過についてお話しする機会があるからではないでしょうか。深刻な健康状態に関する危機に対して、患者と医療者が共通認識を持って治療に取り組むからではないでしょうか。



 私たちはむし歯についても同様の認識を持っています。一度失われた歯の組織は元には戻らず、歯を失うことは人間にとってとても大事な、食べる、話す、気兼ねなく笑うといった行動に大きな影響を与えるからです。「歯が黒くなっているから詰めてほしい」と言われたとしても、まずは検査を行い、検査結果を伝え、治療方針について相談します。むし歯という病気を克服することは、決して簡単なことではないのです。


 そして私たちは、みなさんにもぜひ同じような認識を持ってもらいたいと思っています。保険制度を利用すればむし歯の治療は安価です。子どものむし歯は医療費の助成があればさらに自己負担が少なく治療ができます。しかしそれは、1本のむし歯を軽視しても良いというものではありません。豊かな生活を送る上で、歯はかけがえのないものであり、何度も言いますが、一度失われた歯の組織は元には戻らないものなのです。


 患者さんと医療者が、むし歯に対して共通認識を持ち、きちんと治療に取り組むことができれば、健康な歯をむし歯にすることなく、初期のむし歯を削らずにコントロールし、治療を行なった歯を長く再治療の必要ない状態で維持することが可能です。その第一歩として、患者さんには自らの歯の健康に興味を持ち、ぜひ適切な情報提供を受けることができる医療機関を選んでいただきたいと思っています。


 当院では、クラウドシステムを利用した健康情報の提供に取り組んでいます。安心・安全で、質の高い医療を提供するためになくてはならないものだと考えています。




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